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男を乗せた、黒塗りの高級外車が、止まった。

 

 


そこは、10階建てほどの大きなマンションの前だ。

男は、その最上階のワンフロアすべてを、自分の居宅として使っている。

もちろんマンションそのものも、男が所有する物である。

マンション経営は、男の「表の仕事」の中の一つでもあった。

 


真っ先に助手席から降りた護衛が、ぐるっとあたりを見回し、後部座席のドアを開ける。

 


「チッ!・・・誰だ・・・ゴミを散らかしやがって・・・」

 


護衛は、ゴミの中で倒れている若い男に気が付き、顔をしかめる。

 


「何だ? このガキ・・・酔っ払いか?」

 


足で無造作に仰向けにさせる。

 

 


「組長・・・こいつ怪我をしてるみたいです・・・どっか他に捨ててきますか?」

 

 

 

男は、倒れている若者の顔を見ると、一瞬驚いたような顔をしてしばし考え込んでいる。

 

 

 

「いや・・・俺の部屋へ運ぶ。」

「ええっ? 」

 

 


訳が分からず、声がひっくり返っている護衛。

 

 

 

「こいつは俺の客人だ。だから俺の部屋へ運ぶ。わかったな? 藤堂・・・」

「わ・・・わかりました・・・」

 

 


男は、高価なスーツが汚れる事など全く気にせず、軽々と倒れている若者を抱き上げる。

雨に打たれていたのだろう。ずぶ濡れの身体が死んでいるように冷たい。

 

 


「組長・・・私が運びます。」

 

 

藤堂と呼ばれた男が、手を伸ばす。

 

 

「触るな・・・」

 

 

有無を言わせない、低い声に藤堂はビクッと手を引っ込めた。

 

 


「後はいいから・・・事務所で待機しろ。」

 

 

男は、そう言い残しエレベーターの中に消えた。

上昇して行くエレベーターの中で、男はじっと腕の中の若者を見ている。

 

 

 

 

 

男の名前は、加賀見 嘉行(かがみよしゆき)

東日本最大の組織「関東双龍会」の中でも、飛ぶ鳥を落とす勢いの「加賀見組」の組長だ。

 

 

 

加賀見の腕の中で死んだように眠る若者は、以前に会った時から、どこか彼の目を惹きつけていた。

それは、この若者の顔が、若くして死んだ、加賀見の母親にどことなく似ていたからかもしれない。

たった今、まじかで青年の顔を見て、初めてその事に気付く。

なぜなら彼自身、写真でしか母親の顔を見た事が無かったからだ。

 

 

 

加賀見は、生まれながらに「母殺し」の十字架を背負わされていた。

加賀見の父は、うだつの上がらない極道だった。

それに引き換え、母はとても美しく、優しい女だったらしい。

しかし、身体の弱かった母は、加賀見を産み落とした直後、他界した。

 

 

 

 

男手一つで加賀見を育てた父は、偉い極道になろうと頑張っていたが、思うようにはいかなかった。

酒が入ると人が変わり、幼い加賀見をよく殴ったという。

まるで、妻を殺したのはお前だ、と言わんばかりに・・・

それでも、加賀見は、しらふの時には優しい父を、とても慕っていた。

 

 

 

 

そんな、父が突然死んだ。

関東双龍会の四代目総長、浅野 丈太郎を護衛していた時だ。

当時、四代目総長を襲名したばかりだった浅野を、良く思わない連中が、その命を狙っていたのだ。

父は、浅野を守って、銃弾に倒れた。

即死だった。

当時15歳になっていた加賀見は、父の亡き骸を前にしても、表情を変えなかったという。

強い自制心と、冷静沈着な精神、そんな加賀見の極道としての素質を、

瞬間的に見抜いた浅野は、この少年を引き取り、実子同様に育てた。

 

 

 


『これからの極道は、大学ぐらい出ておかなければいけない』

というのが持論の浅見は、加賀見を大学まで行かせ、帝王学を身に付けさせた。

そして浅野は、大学を出たばかりの加賀見に、大変な仕事を与える事となる。

双龍会が解散に追い込んだ、小さな組の縄張りを、

周囲の反対を押し切って加賀見に任せたのだ。

 

 

 

 

それが「加賀見組」の始まりだった。

その後、加賀見組は急成長を続けてゆく。

「経済ヤクザ」の最先端を行く加賀見組は、

反面、その贅沢な資金を生かし、抗争も辞さない強行な拡大路線をとった。

次々と、軍門に下る組織を傘下に治め、加賀見 嘉行の名は、

恐ろしい武闘派として全国に知られるようになっていた。

しかし、その反面で、敵も多く作っていた。

浅野 丈太郎も引退を考える歳となり、次期関東双龍会五代目総長として、

若い加賀見の名前が出た時、同じ双龍会の内部からさえ、反発の声が上がっていた。

最も・・・

今の加賀見 嘉行に、正面から反旗をひるがす無謀な者など、誰も居なかった。

 

 

 

 


部屋へ入った加賀見は、ぐったりと動かない「汀」という青年を、そっとソファに寝かせた。

明るい照明の下で見ると、予想以上に痛々しい。

 

 

 


腫れた頬・・・

切れた唇・・・

瞼の上も内出血している。

傷の深さを確かめるように、軽く唇に触れてみる。

 

 

 

「・・・っ!・・・」

 

 

 


痛さの為だろうか・・・

反射的に身をこわばらせる青年。

加賀見は、眉をひそめながら他に傷ついている場所が無いか探っていく。

ぐっしょりと濡れたコートを、そっと脱がしかけたところで加賀見の手が止まる。

シャツのボタンが飛んでいて、血の気の無い胸があらわになっている。

そして、その青白い肌のあちこちに、暴行を受けたような鬱血の跡があったのだ。

 

 

 


いったい何があったというのだ?・・・

とにかく・・・

早く濡れた衣服を脱がしてしまわなければ・・・

やがて、一糸の纏わぬ白い肢体ががライトに照らし出される。

刻印された痣の数々・・・

陵辱を物語る無数のキスマーク・・・

白い太ももを伝うのは、陵辱者の残した不浄な液体・・・

精液特有のむせ返るような臭い・・・

 

 

 

いつも冷静なはずの加賀見に、なぜか激しい怒りが込み上げる。

 

 

 

なぜこんなに腹が立つのか・・・

そもそも、なぜこの青年を拾ったのか・・・

自分でも説明できない行動、感情に、軽い戸惑いを覚える加賀見だった。

 

 


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素敵サイトさま、1件。1月31日。じゅん創作、運命は、奪い与える。本編、番外。全掲載完了。
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