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父に連れられて行ったそのお屋敷には、着飾った人々が溢れていた。
当時、人見知りが激しかった俺は帰りたくてしかたがなかったのを覚えている。
いつの間にか、父とはぐれて俺はその屋敷の広い庭園に迷い込んでいた。
心細くて、泣いていた。
「おとうさん・・・」
「お前、どうして泣いているんだ?」
すんだ高い声がした。
泣いている所を見られた恥ずかしさに、顔を俯け続けていると・・・
「人が、話掛けてるんだ、顔ぐらいあげろ!」
少し、怒った声がして顔を無理に上げさせられた。
おずおずと視線をあげたら・・・
そこには、天使がいた。
びっくりして、涙がひっこんだ。
青い空よりも深い藍色の瞳。
陽に空ける茶色の髪は、風にさらわれてさらさらとなびくいて
とても、綺麗だった。
とても、ドキドキした。
天使から、目が離せなかった。
じっと、見ている俺に天使は言った。
「おぃ?迷ったのか?」
「・・・・・」
「ふうーん、まあ丁度退屈してたところだから。お前、俺の相手をしろ」
天使は、俺に手を差し出した。
俺は、その手を取った。
そして、その手を離したくないと思った。
終
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