たそがれの街

たそがれの街の中、二人で手を繋いだ。

あの日の、手のぬくもりを覚えているかい？



あの日の、茜色の空のこと


たそがれの街の美しさを


君は、まだ覚えている？







吐き出す吐息は白くなり。

ああ、寒くなったんだねと君がつぶやいた。





そっと、君の手を握ってみた。

君は、照れくさいのをごまかすように空を見上げた。



「ああ、空がとても綺麗だよ。」





たそがれの街 posted by (C)わいるどクマぷー




君の声に、つられて僕も空を見た。

空を見上げると、ビルの間から沈み行く太陽が見えた。





茜色の太陽は、街を染め上げて・・・


「ああ、本当に綺麗だね。」


僕たち二人は、しばらくの間うっとりと茜色に染まる街を眺めていた。




ーーーやがて


茜色の太陽が沈む頃、街は黄昏時になる。





たそがれの街を、誰もが急ぎ足で家路へ向かう。

そのまま、まっすぐに家に帰る気になれなかった僕たちは・・・

せめてと、通行の邪魔にならないようにと道の端に寄る。




そうして、しばらくの間二人で手を繋いだままで・・・

茜色に染まった、たそがれの街の美しさを楽しんでいたよね。




今日は、久しぶりに君と会う。


だから、君に言ってみようか。


「空を見上げてみて。」ってね。


そうしたら、君も想い出すだろう？



あの日の、手のぬくもり

あの日の、茜色の空のこと

たそがれの街の美しさを


そうしてーーーー


あの日のように、二人でたそがれの街を眺めよう。



そうすれば、最近仕事に疲れている君も少しは・・・

元気になるんじゃないかなって思うんだ。




そんな事を考えこんでいたから、君が来ていた事に気がつくのがおくれたよ。

久しぶりに会う君は、とても嬉しそうに言った。


「ねえ、空を見上げてみて？」


その瞬間、僕は大声で笑い出してしまった。

君は、むっとした顔で怒ってる。


だけど、僕が理由を話せば・・・

君も、きっと笑うに違いない。



end