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ある日の午後・・・

黒いコートの裾をひるがえし、警視庁の大階段を、颯爽と登る岬の姿があった。

 


出先での仕事を終え、報告書を作成するために戻ってきたところだ。

その眉間には、何か考え事をしているかの様に、くっきりと深い皺が刻まれている。

 


あれからーーー

あの事件以来、彼の噂話をよく耳にする・・・

 


いや、以前から彼の噂はよく耳にしていた。

生意気な刑事がいると・・・逆らってばかりだが・・・不思議と憎めないやつがいると・・・

 


ある意味、彼の存在は起爆剤だった。

他の者が、彼と同じ行動をしたらどうだろう?

 


きっと、芽をつまれていただろうと・・・何となくだがそう思う。

彼には、人を惹きつける不思議な魅力があった。

 


目立っていた彼が、あの事件で瀕死の重傷を負った。

あれから、彼は・・・

同じ志を持つ者たちの憧れの対象となっていた。

 


あの時、本庁の幹部と岬、そして清田との警察無線でのやり取りを、

多くの警察官が聞いていた。

 

キャリア、ノンキャリアを問わず、皆が聞き耳を立てていたのだ。

 

 

「時間がないんです!突入の許可を下さい!!」


煮え切らない本部に、切れた彼は叫んだ。

 

「体裁ばかりにこだわっている時間なんかないんだ!!」

 


多くの者達が、本庁幹部のやり方に疑問を持った。

事あるごとに岬と敵対していた、榊でさえそうだった。

 


あれから、本庁の捜査員、若い官僚の一部は、所轄との関係を見直そうと考えだしている。

頭の固い上の者は相変わらずだから、全てが順調なわけではない。

 


しかし、少しずつではあるが、清田との「約束」を成し遂げる為に、いい方向へと変化している。


岬は、自分への期待も大きくなったのを感じていた。

それを疎ましいとは思わない・・・

彼との「約束」を誇りに思う・・・

共有できる夢があることを、嬉しく思う・・・

 

 

だが、私と彼との間にあるのは「約束」だけだ。

回りの者は、清田と私を仲がいいと思っているらしいが、

実際には彼との関係は、友人とさえ言えないものだろう。

 


岬は最近よく考える。

彼と私との間をあらわす言葉は一体なんだろう?

そう、ただの上司と部下ではない。

 

「約束の共有者」だろうか?

 

それだけでは、嫌だ・・・

二人の結びつきが、仕事上の「約束」だけと言うのでは、あまりに寂しい。

それだけでは、物足りない・・・

私は、彼と友人になりたいのだろうか?

それとも、彼らみたいに、なかまになりたいのだろうか?

 

 

思えば、もう長い間 彼に会っていない。

捜査一課に居たときより、偉くなってしまった私は、

直接、事件の捜査を指揮する事が無い。

だから、彼との接点が無くなってしまったのだ。

 


最近では、彼と行動を共にする機会の多い榊に、嫉妬心すら覚える始末だ。

噂はよく耳にするから、会っているような錯覚を覚えるが、

人の噂など信用できるものではない。

だから、私は彼にひどく会いたかった。

 


何故だかわからないが・・・

私の「勘」とでもいう部分が、早く彼に会えと言っていた。

 

 

コツコツと規則正しい靴音を響かせながら、岬は、正面の大階段を登り終えようとしている・・・

 


「みさきさ~ん。」

 

その時、自分を呼ぶ声とともに、誰かの足元が視界に入ってきた。

行く手をさえぎる奴・・・

 


「・・・!?」

 


そいつの顔を見て岬は、声も出ないほど驚いていた。


清田の事を考えていたら・・・目の前にその・・・彼が現われたからだ。

 


だから・・・

本当にびっくりしたのだ。

 

 

清田は私を見て、嬉しそうに笑っていた。

 


「清田・・・」

 


幻でも見ている気分で、私は何を言っていいのかわからない。

何か言わなければと思うが、うまく言葉が出てこない。

 

くすっと、彼が笑う。

 


「岬さん、今俺に何を言えばいいのかわからないんでしょう?」

 

 

読まれていた。

 

 

「身体は・・・大丈夫なのか?」


「はい。もう退院して半年以上だってるんですよ。岬さん見舞いにも来てくれないし・・・」

 


すねたように言われて、ますますどう返していいかわからなくなり一応謝る。

 


「すまない。」

 


すると、彼が吹き出した。

 


「いやだな、謝らないで下さいよ。俺知ってますから、清田さん一度来てくれたでしょ。
俺が話してるの聞いて帰ったって・・・せっかく来てくれたのに、嫌な思いさせてしまってすいませんでした。」

 

「いや・・・こっちこそ・・・」

 

 

私はもう一度謝ろうとした。

それを遮って清田が言う。

 

 

「でもねえ、俺、本当は待ってたんです。岬さん見舞いに来てくれるの・・・
寂しかったですよ。俺、とっても岬さんに会いたかったんですから。」

 


上目使いでそう言われた岬は、胸の鼓動が早くなる自分に戸惑いながら

やっぱり謝ってしまう。

 

 


「すまない。」

 

 

 

清田は笑う・・・

楽しかった。

岬に会えて嬉しかった。

素直に感情を出すというのが、こんなに気持ちのいいものだとは思わなかった。

だから、本心から笑顔が浮かぶ。

見ている者をうっとりさせるような綺麗な笑顔で・・・

 

 


その笑顔に岬は魅せられる・・・

今まで見たことのない笑顔だ。

清田が感情を押し殺すタイプの人間だと 岬にはわかっていた。

泣きたい時も笑顔を浮かべる・・・そんな彼を何度も目にした。

 


辛いのなら泣けばいい・・・そう思っていた。

私の前で無理をするなと、肩を揺さぶりたくなった事もある。

でも、今の笑顔は・・・

 

 


清田は、岬を見て、

ああ、困ってるな・・・と思う。

 


でも、その顔を見て・・・

ますます、楽しくなる。

 

 

「ねえ、岬さん、いつになったら約束の『手料理』食べさせてくれるんです?」

「え?・・・ああ。そうだったな。」

 


岬は、いきなり以前に口約束した手料理の事を持ち出されて焦る。

思考がどうもついていけない。

まさか、彼が覚えていたとは・・・

 

 

意外だったので、驚きもする。

手料理の話は、半分冗談のように交わした会話だったが・・・

会うたびに、言われていたので・・・

いつの間にか、おいしい食事を作ってやる機会をうかがいつつも・・・

いつ誘えばいいのか、タイミングをはかりかねていたのだ。

その間にいろいろな事が起こり・・・

 

 


結局、それから一年近く経過しているというのに、未だに約束を果せていないのだ。

 

 


「今度・・・」

 


いつ休みだ?そう聞こうとした岬はまたもや、清田の言葉に驚く。

 


「岬さん、榊さんに教えてもらったんですけど、
明日非番なんでしょう?実は俺もなんですよね。」

 


返事を期待し子供みたいにわくわくしている清田だ。

 

 

岬の返答しだいで全てが変ってくる・・・

そう、思うから期待もするし、もしも期待した返事じゃなくても

清田にはいくつもの作戦があった。

 

 

岬は嬉しかった。

私の予定を仲間が調べた・・・手料理のためとはいえ・・・

 

 

榊に聞いたというのが、引っかかるが・・・

それでも、彼がわざわざ調べた事が嬉しかったのだ。

 

 

「今日、うちくるか?」

 

 

だからそんな言葉が、岬の口から自然と出ていた。


清田が、驚き、目を輝かせ、本当に嬉しそうに綺麗に微笑むのを見ながら、

この笑顔を独り占めしたい・・・

他の誰にも見せたくない・・・

 

 

そう思う岬だった。

 

 


「いいんですか?もう嫌だって言っても遅いですよーなんて、はじめから今日

岬さんにねだるつもりだったんですけどね。」

 


「いつでも大歓迎だ。」

 

 


岬は微笑みながら言った。


清田は、嬉しかった。

 

 

岬の笑顔を見たのは久しぶりだったから・・・

あまり、岬は笑うことをしない。

感情表現が苦手なのだろう。

 


そんな岬でも、以前から清田の前でだけは、少しだけ感情を表にあらわしていた。

それでも、そんなことは稀で・・・

ああ、この笑顔は俺にむけられたものだ・・・

と思うと、嬉しくてたまらない。

 

 

今、この瞬間、この世で一番幸せなのは俺だろう、そう思いもした。

だから、清田はご機嫌で、にこにこしていた。

そんな彼を誰にも見せたくなくて・・・

 


岬は、清田を連れて自分の執務室に戻った。

 

 

「清田・・・急いで報告書をまとめるから、少しここで待っててくれるか?」


「はぁい。」

 


その声は、始めて見る景色に目を奪われている子供のようだ。

以前から、幼い子みたいにムキになったりする所はあったが、

仕事の時には、清田の大人の部分が、彼の全てを出すのを押さえていたのだろう。

無邪気に、きょろきょろとしている彼はかわいらしい。

本当に子供みたいだ。

 


私は、本当に何一つ彼の事を何も知らないのかもしれない。

 

 

トントンと扉がノックされた。

 


「清田、悪いが扉を開けてくれ。」

「はぁーい。」

 


彼は、子供のように返事をして扉を開けた。

 

 

「失礼します。岬参事官・・・清田!!」

「あー、榊さん!」

「お前・・・」

 

 


そこにいたのは、榊だった。

二人は、岬の前でいつの間にか口げんかをしている。

 

 

あの、いつも冷静な榊が・・・青筋をたてて怒鳴っている。


清田とは、そりの合わない喧嘩友達とでもいえばいいのか・・・

しばらく、そのまま放置していた岬だったが・・・・

そのうちに、子供の喧嘩になってきたのを機に・・・

 

 

「榊、本題は?」

 

 

と、冷たい声で静止をかけた。

 

 

「あっ・・・失礼しました。この書類を確認していただきたく・・・」

 

 

岬は、榊から書類を受け取り読み始める。

少しでも早く帰れるように岬は、頑張っている・・・


なのに・・・

 

 


「榊さん、相変わらず天然さんですね。」

「俺の何処が!」

「教えません~~けど、お見舞いありがとうございました。」

「あっ・・ああ。」

「照れちゃって・・・まあ、榊さんて。かわいいっていわれません?」

「俺を馬鹿にしているのか!!ああ・・そういえば、お前仕事は?」

 

 


ふと榊が、清田に聞いた。

 

 

「今日は、病院に通院する日なので早引けでーす。」

「病院?どこか身体でも?」

 

 

心配そうな榊の言葉を、くすぐったく思いながらも、

嘘のようで嘘ではない言い訳を清田はする。

 

 


「俺まだ、ちゃんと走れないんですよ。神経がね・・・で、週に一度通わなきゃならないんです。」

「それじゃあ、刺された時に入院していた、あの病院に通っているのか?」

「そうです・・・担当の先生が、何でも話せる良い先生なんですよ。

だからきちんと通って、早く現場で走れるようになりたいんです。」

 

 

にっこりと笑う。

現実には、そんな日は来ない。

本人が一番わかっていた。

でも、本当はそうなりたい。なりたかった。

 


だから、嘘だけど本心だ。

本心からつく嘘は人にはばれない。

 


「そうか。」

 


何と答えていいのかわからない榊に、清田は言う。

 


「でも、一つだけ嬉しいなって思うのは、きっちり休みがもらえるって事なんですよねー。

こんな事、直美さんには言えませんけど。その分後でこき使われると思うんですよね。」

 

 


そう、本当なら・・・

 

 


「よし、終わった。榊・・・後はまかせてもいいだろうか?」

 

 


岬は、榊に聞く。

 

 


「岬参事官もたまには身体をゆっくり休めないといけないのに、清田の相手も大変ですね。」


「俺の相手は、大変じゃないですって!でも、そうですね・・・確かに、岬さん仕事頑張りすぎです。」

 


確かにその通りだ・・・

だが・・・気の合わないはずの二人が、このタイミングで似たような事を言う・・・

 

ーーー本当は、この二人気が合うんじゃないか?

 


そう思うと、無意識に岬の眉間には皺が寄る。

 

 

それを見た二人に笑われ、岬は二人にからかわれていた事を知る。

 


「榊、性格変わったな・・・」

「なっ・・・」

 

心外だと顔をしかめた榊の顔を見て、今度は岬と清田が噴出したのであった。

 

 

 

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