運１８

 

 

 

 

 

清田は、予期せぬ再会以来、岬の事ばかり考えていた。

彼の瞳には、二人がとても幸せそうに映ったのだ・・・

 

 

 

岬さん・・・
あなたは・・・

 

 

本当に俺の言葉を

そのまま信じてしまったんだね

愚かで愛しい人

いや・・・

違うね

愚かなのはこの俺だ

 

 

会えるわけがないのに

あなたに会いたい

ずっと

一緒にいて欲しい

怖いんだ

とっても

 

 

一日

一日

過ぎていく

 

 

 

俺にはどれだけの時間が

残されているのだろう？

 

 

一人が恐い

一人は嫌だ

 

あの二人はいい人だけど

でも・・・

 

 

 

優しさが・・・痛い

愛情が・・・重い

 

 

 

 

どれほど愛されているか

わかるから

あの二人の愛には応えられない

 

 

 

 

お願いだ・・・

岬さん・・・

助けてよ

抱きしめてよ

暖めてよ

お願いだ・・・

岬さん・・・

 

 

 

 

痛いんだ

苦しいんだ

寂しいんだ

 

 

 

 

 

側にいて欲しいのは

そう・・・あなただけ・・・

 

 

 

 

 

愛して欲しいのは

あなただけなんだ

 

 

 

 

 

怖くて

心細くて

気が狂いそうだよ

 

 

ああ・・・

そうなんだね

 

 

 

 

 

もうあなたは・・・

他の女（ひと）のもの

あの腕で

あの激しさで

その女（ひと）を愛するの？

 

 

 

 

 

 

 

 

あの唇で

あの声で

その女（ひと）に愛を語るの？

 

 

 

 

 

俺は・・・

本当に

あなたに愛されていたの？

 

 

 

 

 

 

 

嫌だ・・・

嫌なんだ・・・

その腕に

ほかの人を抱かないで・・・

その瞳に

誰も映さないで・・・

他の誰も愛さないで・・・

 

 

 

 

 

 

 

俺だけを抱いて

俺だけを見つめて

俺だけを愛して

あなたを愛してるのに

誰よりも愛してるのに

あなたも愛してると言ってくれたのに

 

 

 

 

 

 

あなたに

一生愛されたい

俺がいなくなっても

あなたの心を独り占めしたい

 

 

 

 

 

 

 

ねえ

どうすればあなたは

一生俺の事を忘れない？

 

 

 

 

 

 

 

ねえ

どうすればあなたは

一生俺の事を愛し続けてくれる？

 

 

 

 

 

 

 

ねえ・・・

もう手遅れなの？・・・

 

 

 

 

再会の夜から

清田は悪夢に悩まされる。

 

 

 

 

 

繰り返し繰り返し

いつも同じ悪夢。

 

 

 

 

 

 

あんな夢を見るなんて

俺は・・・

狂ってるのかもしれない・・・

 

 

 

 

 

 

夢の中で

俺は狂気に支配されている。

手にしたナイフを、岬の彼女に振りかざす。

彼女は、とっさにおなかを庇う。

岬さんの子供を守るように・・・

 

 

 

 

夢の中の俺は

それを見て正気に返る。

 

 

 

 

 

 

彼女のお腹には命がある。

俺が欲しくても叶わない命・・・

新しい命・・・

岬の命を伝える子供・・・

 

 

 

 

 

 

「清田っ！ 何してるっ？？・・・やめろっっ！！」

 

 

 

 

 

岬さんの叫ぶ声。

恐怖と怒りに震えている。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

愛してるんだね。

この人のこと・・・

 

 

 

 

 

 

 

俺は手に持ったナイフを見つめる。

己を恥じ

己に絶望して笑う。

クスクスと俺は笑う。

 

 

 

 

 

 

 

馬鹿な事をしようとしていた。

何をしようとしてるんだ？

 

 

 

 

 

 

 

俺は・・・

 

 

 

 

 

ナンノタメニ

ウマレテキタノダ

 

 

 

 

 

 

「清田、ナイフを放せ！！」

 

 

 

 

 

岬さんが俺に飛び掛ってくる・・・

 

 

 

 

 

 

 

ナイフを奪いあう

俺は自分の胸にナイフをつきたてる

岬が驚いたように

俺を見ている・・・

これで・・・

岬さんの心には

俺が焼きついた・・・

 

 

 

 

 

もういい・・・

楽になろう・・・

 

 

 

 

 

 

呼吸が乱れる・・・

喉もとまで血が上ってくる。

終わりだ・・・

 

 

 

 

 

 

いつもそこで、目が覚める・・・

いつも同じ夢。

 

 

 

何度も何度も清田を襲う悪夢。

 

 

 

 

 

 

気が狂いそうだ。

岬さんのため？・・・

そんな奇麗事を、自分に納得させていた。

でもそうじゃないんだ・・・、

本当は自分のためにあの人の側を離れたんだ。

 

 

 

 

 

 

痩せ衰えていく体をさらして・・・

愛が同情に変わっていくのを見たくなかった。

 

 

 

 

 

惨めな姿をさらしたくない・・・

同情なんてされたくない・・・

 

 

 

 

 

岬さんの瞳には、純粋に愛し合った頃の自分の姿を焼き付けたかった。

ただそれだけ・・・

何が岬さんのためだ・・・

俺の一人よがりだった・・・

 

 

 

 

 

 

 

なのに・・・

岬さんの側にいる彼女の事を・・・

夢で殺してしまうほど

憎んでいる。

 

 

 

 

 

 

俺は・・・

あの人の心を独り占めしたい・・・

永久に・・・

永遠に・・・

あの人が死ぬまで・・・

その心を独占したかった・・・

 

 

 

彼の子ども？・・・

まさか・・・考えもしなかった。

この命が尽きる前に

そんな事実を知ることになるとは・・・

 

 

 

憎い・・・

岬さんの彼女は何も悪くないのに

ぜんぜん知らない人なのに

憎い・・・

 

 

 

 

こんな醜い心のまま俺は死ぬのか・・・

何の為に・・・

あんなに辛い選択をしたのだ・・・

 

 

 

 

岬さん・・・

もう一度・・・

 

 

 

 

お願いだ・・・

もう他の事はどうでもいい・・・

 

 

 

 

 

 

岬さん・・・

岬さん・・・