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夜の街・・・
急ぎ足で歩く直美の姿があった。
彼女は、清田の仕事仲間である。
合コンの帰りに雨に降られ、直美の気分は最悪だった。
まったく、ろくな男そろわないんだから。
もっと、清田君みたいな・・・
清田を思い出して、閉じ込めていた想いが蘇えりそうになる。
馬鹿だわねえ、私って。
何でいつまでたっても清田君を・・・好きなんだろう。
始めて会った時から気になっていた。
それが恋だと気がついたのは、清田君の、あの一言だった・・・
「俺が、あなたを守るから!!」
胸が高鳴った。
この人となら・・・
一瞬、そう思ってしまう自分がいた。
でも同時に、彼の言葉の意味も、私には痛いほどわかっていた。
彼が私を守ろうとする理由は・・・
「同僚」だから・・・
そして一応は、か弱い女の子だから・・・
私に対して恋愛感情があるわけじゃない。
だから私は、この気持ちを押し殺して「友情」に育てた。
そんな事も知らず、無邪気に笑いかけてくる彼が時折憎らしくもなる。
本当に女心がわかっていないやつ・・・
そう思うが、それでも清田君を好きだし、
「同僚」として「友人」として一番に自分が居る事で、直美は十分満足していた。
それに、最近の清田君は、とても幸せそうだ。
理由は、わかっている。
どうやら、あの岬さんと、なにやら特別な関係になっているらしい。
他の人には隠せても、私の目は誤魔化せないわ。
でも、清田君の幸せそうな顔を見てると、それでもいいかと思ってしまう。
男に取られたのはショックだけど、可愛い彼女でもできた方が、もっとムカツクかもね。
だから・・・
まあ、いいか・・・
早くいい男みつけて自慢してやろう。
そう直美は思うのだ。
ふと時計を見ると、すでに深夜2時を過ぎていた。
最後まで馬鹿な合コンに付き合った自分がおかしくなり、笑い出しそうになる。
それに・・・
この時計をしている限り私は清田君のことを忘れられそうもない。
お食事10回分を帳消しの約束で、清田の愛用の時計をもらった。
今では、は直美の宝物でありお守りだ。
さあて、明日も忙しいから近道で帰ろう・・・
直美は公園を通り抜けようと、中に入っていく。
そして、真ん中ほどまで来たところで、驚いた。
こんな時間に、こんな雨の中、まさか人が居るとは思わなかったのだ。
その人影は、雨に打たれ、傘もささずに、しゃがみこんでいる。
もうひとつ驚いたのは、その人影が、直美のよく知っている人に似ていたからだった。
清田君?
まさかね。
そう思ったが、気になって近くによる。
やっぱり清田君だ。
彼は泣いていた
雨に濡れながら・・・
確かに泣いていた。
だから直美は、一瞬声をかけるのを躊躇った。
いったい何があったと言うの?
触れてはいけないような・・・
声をかけてはいけないような気がした。
でも、このままでは風邪をひいてしまう。
直美は、できるだけ平静を装って声をかけた。
「清田君、いいおとこがだいなしよ~」
でも、彼は動かない。
「清田君?」
反応がない。
変だ・・・
直美は、彼の肩を何度も揺する。
すると清田の体は、力無く傾き、そして倒れてゆく。
「清田君!!」
咄嗟に彼の頭を庇うようにして抱きとめるが、その反動で自分も転ぶ。
「きゃっ。」
いったいどれほどの時間、雨に打たれていたのだろうか?
彼の身体は氷のように冷たく、暗がりでも唇の色が無いのがわかる。
「清田君っ! しっかりしてっ!!」
ぴくりとも動かない清田を見て、直美はどうしようと思う。
ああ、そうだ。
「救急車呼ばなきゃ!!」
そう言いながら、直美はポケットの携帯電話を取りだす。
「呼ばないで・・・救急車は・・・」
清田は、朦朧とする意識の中で、呟くように直美に告げた。
(救急車なんて呼ばれたら最後だ。もう、死ぬまで病院の外には出られない。)
その時の直美には、なぜ彼が嫌がっているのか、考える余裕はなかった。
とにかく、清田は嫌だと言う。
それなら、かけるべき相手は一人だ。
「じゃあ、岬さんに・・・」
岬の名前を聞いた瞬間に、清田は完全に現実にかえる。
「岬さんだけは呼ばないでっ!・・・お願いだから・・・」
清田は、必死に訴える。
その様子を見て直美は、何かがあったんだと悟る。
こうなったら・・・
「清田君歩ける?私のうちまですぐそこだから。」
よろける清田を必死で支えて直美は歩く。
何があったの?
聞きたいことは山ほどある。
でも、今は聞かない。
清田は、薄れそうになる意識を集中させて歩く。
一歩一歩・・・
直美に支えられて、歩く。
直美の腕が温かいと感じた。
やっとの事で直美の部屋にたどり着く。
「ごめんね・・・直美さん・・・」
そう言いながら清田は、倒れ込むように意識を手放した。
直美は、清田のずぶ濡れの服を脱がせる。
彼の体には暴行を受けたような跡があった。
殴られた痕跡があちこちにあった。
それに・・・
すこし痩せたような気がする。
変だ。
おかしい。
何かが・・・
清田は寒さの為に、がたがたと体を震わせている。
彼の冷え切った身体は、布団でくるんだだけでは暖まらない。
直美に躊躇などなかった。
彼は病人だ。
だから・・・
直美は手早く衣服をぬぐと、清田の傍らに滑り込んで抱きしめる。
早く暖めてあげたい・・・そう思ったから・・・
腕や背中を摩るようにマッサージする。
無意識に、清田が擦り寄ってくる。
「岬さん・・・」
そう呟きながら・・・
切なさが直美を襲う。
清田は夢に見ているのだろう。
岬の事を。
今側に居るのは私なのに・・・
すこし悲しくなる。
でも・・・
直美は清田を強く抱きしめる。
岬さんの代わり・・・それでもいいと思う。
(清田君・・・)
直美は清田に優しくキスをした。
夢を見ていた。
幸せなあの時の夢。
岬がキスをしてくれる。
抱きしめてくれる。
ああ、あたたかいね。
岬さんの腕の中は・・・
清田は泣いていた。
静かに泣いていた。
声も出さないで・・・
とても幸せそうな顔で・・・
キスに応える清田に刺激を与える。
少しだけね。
ごめんね。
清田君。
私を岬さんと思ってくれていいから・・・
刺激に反応して立ち上がったものを、直美は自分の中へと導き入れる。
私は岬さんじゃないって叫びたかった。
でも・・・
たとえ代わりでもいい・・・
じゃなきゃ・・・
ね。キスさえ出来なかったよね。
とにかく今は・・・彼を感じたい・・・
清田を高みに導きながら、直美も背徳の絶頂をむかえる。
ある意味、強姦してしまったわ。
そう思う。
空しくはなかった。
思いを遂げられた・・・そんな気がした。
清田君は意識がない。
だから、黙っておこう。
ねえ、いいよね。
それぐらい。
穏やかに眠る清田にキスをする。
直美は清田の体を清めると、もう一度彼を抱きしめた。