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彼は、岬の腕の中で、疲れたように深い眠りについている。
岬は不安だった。
しかし、この不安感がどこから来ているのか・・・
自分自身よくわからない。
俺は幸せだ。
幸せなはずだ。
なぜなら・・・俺には仲間が居る。
会えば会うほど、愛しさがつのり、会えない時でさえも会いたくなる。
ずっと、一緒にいたい。
それが俺の自然な気持ちだ。
きっと世間では、受け入れられないだろう。
だが、自分の気持ちは決まっている。
俺は、決して器用な方ではない。
一度本気で愛し始めたら・・・一生愛し抜く。
そう、だから今まで誰にも本気にならなかった。
だが、春樹に会い・・・彼を愛してしまった。
もう彼を離す事などできはしない。
よく彼は笑う。
幸せだと笑う。
しかし彼は、時々遠くを見ているように、悲しそうな目をする時がある。
彼の中に、俺の知らない何かがあるような気がして、不安が心をよぎる。
それに、春樹は「愛している」と言わない。
俺が「愛してる」とささやけば、
「同じです」と答える。
それは、自分と同じようでいて違うような気がしてしまう。
彼を信じていないわけではない。
だが・・・
彼の口から、彼の本心を聞きたい。
「愛している」と言って欲しい。
そうすればきっと、彼の心の中が
自分の存在で満たされていると感じられる。
上司から「その話」があった時、岬は直ぐに断ろうと思った。
今の自分の立場なら、決して断れない話しではない。
しかし、あえて岬は返事を保留していた。
なぜなら・・・
春樹の本心を聞けるかもしれない、と思ったからだ。
( 見合いをするかもしれない )
彼は、何と言うだろう?
試してみたい・・・
そして言って欲しい・・・
『愛している』と・・・
岬は、間違いなく信じていた。
彼はきっと言ってくれると・・・
信じていたからこそ・・・
彼を試すことができたのだ。
「今度見合いするかもしれない。」
一瞬、目を見開き驚く春樹が見えた。
それから、視線をそらして、黙り込む。
「でも、上司の顔を立てて会うだけだ。誰とも結婚するつもりは私にはない。」
「どうして?」
聞き逃しそうな声で彼が言う。
「俺にはお前がいるじゃないか。」
そう思ったからそう言う。
岬の言葉にまったく嘘はない。
真っ直ぐに彼の目を見る。
(春樹・・・お前はどうなんだ?・・・聞かせてくれ・・・お前の気持ちを・・・)