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神を信じますか?

そう聞かれたら、清田 春樹は即座に答えるだろう。

神なんて存在しない、と。

運命を信じますか?

そう聞かれたならば、清田は即座に答える。

運命は信じる、と。

 


清田 春樹は、神などというものの存在を信じてはいなかった。
でも、運命ってやつは確かに存在するんだと思っている。
なぜなら、幼いころから清田は、運命に翻弄され続けていたからだ。


運命はいろんなものを清田から奪っていった。
もし神が存在するのなら、こんな不平等な仕打ちをするはずがない。

 

大切な人・・・
大切な物・・・

 

すべてを失った。

 

運命の名のもとに・・・

 

清田は、まだ幼い頃に、両親を失っている。
自動車事故に巻き込まれて、彼の目の前で亡くなったのだ。

大切な思い出の詰まった家は、親戚に奪い取られた。

彼の手に残ったのは、優しかった母が作ってくれた、うさぎのぬいぐるみだけだった。

そう・・・

それがすべて・・・

だから、とても大事にしていた。

そのぬいぐるみだけが、暖かかった家庭の記憶に、繋がっていた。

 

 

「うさぎさん貸してよ~」

そう言われて、取られると思った。

「いや。」

と言うしかなかった。

相手はむきになって、奪い取りにかかる。

「いやだ。やめてよ。」

( おもちゃでも何でも、いっぱい持ってるじゃない。なんで僕の大切なものを取るの?)

だから、必死に抵抗する。

気がつくと、相手は泣いていた。

大きな声で、

「お母さんー」

と叫ぶ子を、清田はぬいぐるみをしっかりと抱えて見ていた。

 

 

泣いている我が子を庇うのは、どこの親も一緒なのかもしれない。
よその子供よりも、自分の子の言葉を信じるのだ。


「春くんがね、貸してくれないの。」

泣きじゃくる我が子が指差すのは、清田の腕の中の汚いぬいぐるみ。

「貸してあげなさい!!」

「いやっ!」

反抗する幼い清田に、彼女はかっとなる。

( 誰が面倒みてあげてるの? 感謝こそすれ反抗するなんて!!)

 

殴る。

何度も何度も殴りつける。

日々の生活の疲れが、嘘みたいに取れて来る。

 

殴られて、ぐったりとしている少年は、まだ汚いぬいぐるみを離そうとしない。
彼女は、そんな少年を見て、なんて可愛げのない子供だろう、と思う。

 


力なく横たわる幼い彼から、強引にぬいぐるみを奪いとり、我が子に与える。

だけど、その子にとってみれば、ただの汚いうさぎのぬいぐるみだ。

少年が、大事にしていたからちょっと欲しかっただけ。
しばらく遊んでいたが、すぐに飽きたんだろう。
その子は、ぽいっとぬいぐるみを放り出した。

 

「なんで、こんなもの欲しがるの?」


彼女が溜息をつき、それをごみ箱へ捨てるのを・・・幼い彼は見ていた。

 

そっと、ごみ箱から取り出す。

耳が取れてしまい、その原型すらなくなっている。

涙が出る。

大事にしていたんだ。

とっても大事にしてた・・・

夜も抱いて寝た・・・

片時も離さなかった・・・

どうして人が大切にしていたものほど 取り上げようとするんだろう・・・

もう二度と取り上げられない方法はないかな?

隠してさえおけば・・・

見つからない?

取られない?

奪われない?


清田は、自分の鞄の底にそっとぬいぐるみをしまった。

 

その後 清田少年は、いろんな親戚の家をたらい回しにされていた。
そうこうするうちに、感情を笑顔で隠す事を、自然に覚えた。

笑顔で言う事を聞いていれば誰もが満足をする。
大丈夫、僕は笑っていられる。
一番大事なものは、鞄の底に隠してあるから大丈夫。

そう思っていた。

 

「春樹ちゃん。鞄ね、ぼろぼろだったから新しいの買ってきたわよ。」

にこにこと笑うおばさん。
一番親切にしてくれた人。

「ありがとうございます。」

にっこりと笑顔で答える。


あれは?

あれは何処?

与えられた部屋の中を捜す。

ない・・・

ドアがノックされておばさんが入ってくる。

「あ、春樹ちゃん。鞄の中身は全部捨てたけど。よかった?」

ステタ?・・・

「・・・・」

「ほら、春樹ちゃんも大きくなったから・・・持ってきた服とかね。小さくなったでしょ。だからね。」

おばさんは、新しい服を買ってきたのだ と嬉しそうに見せてくれる。
今では無意識に浮かべる事の出来る笑顔で、ただ見ているしかなかった彼。

自分にとっては、とても大事な物でも、他の人間にはわからなかったのだ。

守ろうとしても、奪われる。
隠していても、捨てられる。

それなら大事なものなんか、もうつくらない。

何も持たない。

もう、いやだった。

好きなもの、大切なものを失うのはもうたくさんだ。

 

 

「ごめんね、他に好きな人が出来たの。」

「えっ?・・・」

今何って言ったの?

ホカニスキナヒトガ?・・・

頭は激しく混乱してるのに、無意識に笑顔を浮かべている清田。

「ああ・・・そう・・・じゃ仕方ないね・・・」

「ごめんね・・・」

たったそれだけで終わりだった。


好きだった。

初恋だった。

人を好きになるってすばらしい、
この幸せはいつまでも続く・・・

そう思っていた。

でも、彼女は他に好きな人が出来たという。

なぜ?

「いつまでも好きよ・・・」って言ってくれたのに・・・

あれは嘘だったの?

人の心がそんなに簡単に変わるものだと理解できなかった。
また、理解しようとも思えなかった。

 

 

 

大切な「モノ」

大切な「ヒト」

 


運命ってヤツは、すべてを奪い去った。

 

今までも・・・
多分これからも・・・

 

もしそれが僕の運命だというのなら・・・

 


これからも・・・
大切な「モノ」を奪われるのなら・・・
大切な「ヒト」を失うのなら・・・

 


もういらない。
もうつくらない。

 

何も好きにならない。
誰も好きにならない。

 


それなら失うものはない。
傷つかない。
悲しまない。

 

 


さあ・・・
運命よ・・・

いったい「ナニ」を奪う?

 

 

 

 

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素敵サイトさま、1件。1月31日。じゅん創作、運命は、奪い与える。本編、番外。全掲載完了。
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goannai posted by (C)つきやさん
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