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黙ったまま一言も話さずに、僕達は歩いた。
「成久・・・」
「・・・・」
成久からは、一言の返事もなく、僕は話しかけるのを諦めた。
きつく握られたままの手が、痛かった。
いつしか、周りには派手な光の看板が立ち並び、裏通りのラブホテル街へと来ている事に気付く。
会うって・・・SEXをするって意味だったのだろうか?
会いたいと言われて、浮かれていた僕は何だったんだろう?
しばらく歩いた後、成久は僕に何も言わずにホテルに入る。
そのまま無言で部屋を選び、エレベータに乗りこむ。
僕の方も、とても話しをする気になれず、
何か居たたまれないような、居心地の悪さを感じていた。
沈黙のままで、エレベータが止まる。
扉が開き、成久が一歩踏み出す。
不意に、僕は嫌になった。
そう・・・
ここでこうしている事に・・・・
突然逃げ出したくなり、僕は成久の手を振り解こうとした。
「汀っ!!」
成久の目が、怖い。
目の前に居るのは、僕の知っている成久ではない。
会った時から漠然と感じていた事だが、今の成久は嫌いだ。
僕は、追い詰められた小動物のように暴れた。
《バシッッ!!》
左の頬で何かがはじける。
殴られた・・・
思う間もなく右の頬も打たれる。
成久が自分を殴ったという事実・・・
ショックだった。
痛みなんかより、遥に僕の心を打ちのめす。
かすかに血の味がする。
口の中を切ったかもしれない。
引きずられるように、部屋に連れこまれる。
どうしてこんな事に・・・
考える事を拒否した頭で、ぼんやりとそんな事を思っていた。
実は、僕には現在付き合ってる人がいる。
成久と別れて、ぼろぼろになっていた僕を、支えてくれた人だった。
僕はその人の優しさに甘えて、この三年を過ごしてきた。
その人と僕は、自然とそういう関係になっていった。
『忘れられないのなら、無理に忘れることはない。』
・・・手負いの心を癒すのに、根気よく力をかしてくれた優しい人・・・
『汀が誰を愛していようと構わない。側に居てくれるだけでいい・・・』
・・・僕の中の「過去の人」に、静かな闘いを挑んだ強い人・・・
『愛しているよ・・・汀・・・どんなに時間がかかっても、いつかお前の心を私で満たしてみせる・・・』
・・・こんな僕のすべてを愛してくれた、かけがえのない人・・・
なぜ成久からの電話があんなに嬉しかったんだろう?
懐かしい夢を見ていただけだったのか?
それなら夢は一気に覚めてしまっていた。
確かに僕は、成久に会いたかった。
いつまでも好きな人・・・
忘れた事なんてなかった。
それは、嘘じゃない。
でも・・・
会おうと思った自分を・・・
こうして今ここに、ホテルの部屋にいる自分自身を呪った。
本当に・・・
本当に大事な人は、いつもすぐ側に居た。
「汀・・・何を考えている。」
振り向くと成久がネクタイを外し、服を脱ぎ始めている。
「嫌だっ!!」
僕は、咄嗟にドアに駆け寄る。
「こいつっ!!」
あっさり捕まり、ベッドに引き倒される。
ブチッブチッと服のボタンが飛び散る。
成久の体が上に圧し掛かる。
無理矢理僕の唇を奪おうと、彼の顔が覆い被さってくる。
抗って顔を背ける。
「嫌だっ!!」
手足をばたつかせて抵抗を試みる。
「うるさい!! おとなしくしろっ!!」
逆上した成久は、口汚く罵り、怒鳴り、僕を殴る。
当たり構わず殴る。
僕の顔が、弾かれたように何度ものけぞる。
死ぬかもしれない・・・
一瞬そんな気がする。
ごめんなさい・・・
あの人に謝る。
やがて意識は途切れ、壊れた人形のように横たわる汀。
「手間をかけさせやがってっ!!」
成久は、汀にまとわり付いている衣服を、乱暴に剥ぎ取っていった。
下半身が引き攣れるような痛みに、意識が呼び戻される。
激しく身体を揺さぶられ、ぐらぐらと動く視界の中で、ニヤリと笑う成久の顔が見える。
「目が覚めたか? 汀・・・」
ベットが揺れて、ギシギシと音がしている。
その音が僕には、たまらなく不快な音に聞こえ耳を塞ぎたくなる。
違う、塞ぎたいのは目だ。
現実から目を背けたい。
しかし、体に感じる痛みがこれが現実だと僕に実感させる。
「い・・・痛い・・・」
「すぐに良くなるさ・・・」
成久は、笑いながら言うと、ペースを落とし、じっくりと腰を動かしはじめる。
それと同時に、恐怖で震えている僕の中心を、そっと掴む。
「・・・っ!・・・」
僕の身体を知り尽くした成久の指が、優しく巧みに弱点を攻めてくる。
「い・・・嫌だ・・・」
円を描くように腰を使われ、軋んでいた部分が嘘のように馴染んでくる。
前後への刺激に、機械的に反応してしまう肉体。
いつしか、僕の中心は痛いほど張り詰めてしまう。
「だめっ・・・いや・・・だ・・・」
「嫌なものか・・・汀の身体が、俺を忘れられるはずがない。ほら・・・こんなになって・・・」
反応を楽しむように、深く、浅く、腰を自在に使って僕を嬲る成久。
心とは裏腹に、丸みを帯びた先端から屈辱の涙をしたたらせて、成久の指を濡らしてしまう。
「ほら・・・これは何だ? こんなモノをいっぱい出して・・・」
成久は、二本の指の間に糸を引く、透明な粘液を見せ付ける。
「ああぁっ・・・酷い・・・やめて・・・」
「お前は俺のモノだ。誰にも渡さない・・・」
成久の腰の動きが激しくなる。
僕は、何とか感じまいとして、強く唇を噛むが、前を強くしごかれ、後ろも激しく打ち込まれ、
耐え切れずに、高く鳴いてしまう。
「あああぁっ!・・・駄目っ!・・・いやだぁっ!・・・」
僕は、心と身体を切り離されたような違和感を感じながら、
ケモノのように荒い息をして、登り詰める。
「ううぅっ!!・・・駄目っ!・・・いくっ!・・・あああああぁっ!!」
同時に成久も低くうめくと、歯を食いしばって、僕の中に精を注ぎ込む。
体内に、成久から飛び出したモノが、流れ込むのを感じ、
全てを失ったような虚脱感に襲われる。
「ああぁ・・・よかったよ・・・汀・・・」
成久が、そう言いながら力尽きたように僕に覆い被さってくる。
哀しくて・・・
悔しくて・・・
感じてしまった自分が情けなくて・・・
大粒の涙が一滴・・・
ポロリと頬を伝う。
「どうした? 泣くほど良かったのか?」
僕は、黙っていた。
嫌悪感と罪悪感だけが僕の心を支配していた。
「どいて・・・」
それだけ言うのが精一杯だった。
とにかく早くここから出たい。
成久から逃げたい。
あの人に会いたい・・・
でも・・・
今度ばかりは・・・
今度ばかりは
もう僕を
許してはくれないだろう。
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