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その日ーーー
僕は、思いもよらなかった人から告白された。
「菊池・・・・」
呼び止められ、振り返る。
僕を呼びとめたのは、木山さんだ。
ーーー今度は、何?
ついつい身構えてしまっても仕方がないと思う。
「何でしょうか?」
「・・・・・・。」
木山さんは、無言だ。
何も言わない木山さんを前に、僕は居心地が悪かった。
今まで、嫌がらせまではいかないにしても。
厭味を言われたり、きちんと仕上がっている書類にでも・・・
もっと、わかりやすく作れとか・・・
とにかく僕は、この人と顔を合わす度にきつい言葉をもらっていた。
初めてきついお言葉をもらった時は、びっくりした。
なにせ、初めのころはすごく優しかったから・・・
ほんと、今と比べるとすごいギャップだ。
慣れてきたのかもしれないけど・・・
まあ、最近の原因ははっきりしているしね。
その理由は、僕の直属の上司である南沢さんの事を尊敬しているらしくて・・・
その「部下」に「僕」がなった事が気に入らないみたいだ。
この間なんて、「木山では南沢さんの足を引っ張る。」って言ってた所に出くわしちゃったし。
ーーーあれは、ちょっときつかったなあ・・・・他の人だったら泣いているかもしれない。
まあ、とにかく僕のことを木山さんが「目の敵にしている」のは確かだ。
木山さんが、何も言わないので二人して突っ立っている。
その横を、同情の視線を僕に投げかけながら通り過ぎていく。
どれだけ時間が過ぎただろう。
「俺は、お前が好きだ。」
そう言うと、木山さんはうつむいた。
耳が赤く染まっている。
ーーーああ、そうだったのか
あれか・・・小学生が好きな子の気を引きたくてってやつだったのか。
だけど、あそこまでいろいろされたら誰だって嫌われているって思うって・・・
もう少しぐらい手加減してくれたら、よかったのに・・・
今までのダメージが大きかったせいか・・・
喜んでいいのか悪いのか・・・
ーーーこの人にしたら、僕の気を引きたくてした事だなんてね。
ーーーなんか、この人すごくかわいいんだけど木山さん。
だから、ついくすりと笑ってしまった。
それを誤解したのだろう、木山さんが顔を俯けたまま言った。
「やはり、気持ちが悪いと思うよな・・・すまない・・・」
ここまで、さんざん煽っておいて言い逃げ?
そんなの、僕が許すと思ってるの?
この人?
「返事はいらないんですか?」
その言葉に、木山は足を止める。
「返事なら、聞かなくてもわかってる・・・・」
「そうですか?何も言っていないのに?僕の気持ちがわかるっていうんですか?」
「ああ、迷惑をかけてしまってすまない。忘れてくれ・・・」
「忘れませんよ。だって、僕も同じ気持ちなんですから。」
「そうか・・・へ?」
木山さんは、ぽかんと口を開けたまま固まっている。
「すごい、間抜け顔・・・」
ーーー今頃、頭の中はパニックってるんだろうなあ。
僕は、木山さんの腕を強く引いた。
固まっている状態のままの木山さんは、簡単に僕の腕の中に転がってくる。
そして、固まったまま顔を真赤に染めるなんて器用な事をしてくれた。
僕は、木山さんにキスをしかけた。
ーーー先制攻撃ってやつ。
なのに・・・
気がつけば、息が苦しくなるぐらい舌をからめられ喘いでいたのは僕だった。
この人ったら、何食わぬ顔してやたらと慣れてる。
いつのまにか、夢中になっていた。
ーーーーなんか、悔しい。
告白してきたのは、木山さんなのに・・・
主導権を僕が握れないなんて・・・
だけどそれ以上に、嫌なのは・・・
どこで、そのテクニックを磨いてきたのとか気にしている僕の心だ。
end