忍者ブログ 祈2-声 てすと中MOON-NIGHT&LOVERS-KISS
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ずっと続く・・・
眠れない夜・・・


当たり前だ・・・

今夜もまた、「声」がする。
あの声が聞こえてくる。


必死で、耳を塞いでも意味がない。
その声は、僕の耳の奥に焼き付いていたから・・・

あれ以来・・・
そう・・・
あの日・・・あの夜から・・・

そして、僕の脳裏によみがえるのは・・・あの時の光景・・・

兄さんと、彼女の・・・

あの時の・・・











その日は、蒸し蒸しと暑く、とても寝苦しい夜だった。

そのために、普段ならとっくに眠っている時間だというのに「夏樹」はなかなか寝つけないでいた。
しばらく、ベットの上でじっと目を閉じ、眠る努力をしていたが・・・
あまりの暑さに耐えかね、どうにも寝られそうもなかった。


「暑い・・・」

ベットの上で、気だるい寝返りを、何度も打ちながら、夏樹は呟く。

「あぁ・・・喉が渇いた・・・」

サイドテーブルの上のインターホンを取ろうとして、壁の時計が目に入る。
時刻は、夜中の2時を過ぎていた。

「もう・・・こんな時間なんだ・・・」

夏樹は、いつも自分の世話を一生懸命してくれている、「中野」の顔を思い浮かべる。

中野は、この広い屋敷を取りしきっている人物だ。
その上、幼い頃から夏樹の面倒を見てくれていた。
いつも忙しそうに屋敷中を走り回っている。

そんな中野を、咽喉が渇いたからといって、こんな時間に起こす訳にもいかない。

(お茶ぐらい、自分で飲みに行こう。)

そう・・・キッチンに行けば、きっと飲み物ぐらいは何かあるだろう。

夏樹は、そう決めるとベットを抜け出して、暗く長い廊下へと出て行った。








喉の渇きを潤し、自室へ戻る途中の事だった。

『・・・あぁ・・・くぅっ・・・』

どこからともなく聞こえてくる声に、夏樹はふと足を止めた。

誰の声?
奈津子さんだろうか?
気分でも悪いのかな?


そう言えば、奈津子さんは昼間、気分が悪そうにしていた。

夏樹は、耳を澄ませ、声の聞こえてくる方に歩き出す。
辿り着いたところは、やはり奈津子の部屋の前だった。

やっぱり、どこか身体でも悪いのかな?

そう思う夏樹だったが、日頃から奈津子には、何故だか嫌われている様な気がしていたので、
こんな夜中に声をかけるには、どうも躊躇いが先にたってしまう。

どうしよう・・・
どうしたらいいんだろう?



『あっ・・・あぁっ・・・』

だが・・・
一際大きな声が耳に飛び込んで来ると、やはり心配になって、
夏樹は、迷いつつも扉に手をかけた。

重く、大きな扉は、音も無く開き・・・

その隙間から・・・夏樹の目に飛び込んできた光景は・・・

裸の男女・・・
重なり合う二つの肉体・・・

それが「誠司兄さん」と「奈津子さん」だと認識するのに、しばらくかかった。

(いったい何をしているの?)

解らなかい・・・

不自然かもしれないが、夏樹にはそういう知識が無かった。

無理もない。
幼い頃から虚弱体質だった夏樹は、普通の子のように、学校へ通ったりさせてもらえなかった。
だから夏樹の知っている世界は、この屋敷の中だけであり、
知っている知識は、家庭教師から与えられたものだけだ。

また・・・
夏樹の、子供のような純粋さ、無邪気さを、何よりも気に入っていた誠司は、
余計な知識など、彼にいっさい与えなかった。
テレビさえ夏樹の部屋には置かれて無かったのだ。

しかし・・・
そんな環境の中でも、誠司は夏樹を大切に育てた。

そう・・・
大切に・・・大切に・・・
まるで、真綿で包み込むように・・・




「あぁっ・・・」

奈津子が切なそうにあえぐ。

「なつ・・・」

誠司は優しく呼びかけ、口づけを落とす。

「ああっ・・・誠司さん・・・」

軋むベッド・・・
下半身を絡ませ、妖しく腰をくねらせる二人。
荒い息使いが夏樹の耳にこびりつく。

何をしているのか、何の為の行為なのか・・・夏樹には解らない。

逃げなきゃ・・・

見てはいけない事だとは直感した。
でも、夏樹には刺激が強すぎたのだろう。
足が動かない、目が離せない。

大人の世界の秘め事・・・
初めて知った淫靡な世界・・・

夏樹は、自分の下半身が疼くように熱を持ち、固くなっている事に気付いた。
恐る恐る下着の中に手を忍ばせる。

「・・・っ!」

何とも言えぬ不思議な感覚が、背すじを駆け上がる。
膝に力が入らず、カクカクと震え出す。
未知の感覚に怖ささえ覚えるが、触れるのをやめられない。


「あぁん・・・誠司さん・・・あああぁっ・・・」

奈津子のあえぎが、ひときわ高くなる。

「なつ・・・なつ・・・」

汗を滴らせ、呼吸を荒げる誠司。

「ああぁぁっ・・・もう・・・」

切羽詰ったように、白く細い首をのけ反らす奈津子。

「お願い・・・誠司さんっ・・・来て・・・奈津子・・・もう・・・あああぁ・・・」

高く上げられた奈津子のつま先が、奇妙な形に反り返る。

「くっ!・・・」

それに応えるかのように・・・
誠司の下半身の筋肉が、痙攣するように引きつっていた。



夏樹は息を呑んだ。
と同時に、下着の中に忍ばせていた手に、何か生温かいモノがほとばしり、
衝撃的な感覚が、頭まで突き抜ける。

産まれて初めての射精だった。
立っていられずに、その場に跪く。
片方の手で口を押さえてなかったら、きっと声を上げていただろう。


夏樹は、我に返るとその場から、慌てて逃げ出した。
自分は、とんでもなく悪い事をしたのだと感じていた。

怖くて怖くて・・・
一度も振り返らずに、泣きながら廊下を駆けた。






その日から、僕は眠れない。

耳にこびり付いた・・・あの声・・・
目に焼きついた・・・あの光景・・・


そして・・・今夜もまた・・・

そう・・・まるで僕をあざ笑うかのように・・・
声は・・・聞こえてくるんだ。




『誠司さん・・・』

甘い声で兄さんの名を呼ぶ彼女・・・
せつない喘ぎ声・・・

兄さんに選ばれた彼女(ひと)の声・・・



『奈津・・・』

彼女の名をささやく、兄さんの声・・・

いつもの、低く冷たい声じゃなく、久しぶりに聞いた、優しい声色。

今では、彼女だけ聞く事が許されている暖かい声・・・

兄さんが呼んでいるのは、僕の名前ではないのに・・・
忘れられない記憶を思い出す・・・

遠い昔・・・
僕の名を、優しく呼んでくれた兄さんの事を・・・

『夏樹(なつき)・・・私の可愛い・・なつ・・・』


ある時から、決して僕には向けられなくなった、優しい声・・・

『奈津・・・』

今では、その声は彼女に向けられているのに・・・
いつしか、自分の名を呼ばれているような、錯覚に陥ってしまう。



そして・・・
あまりにも衝撃的だった、あの時、覗いてしまった光景・・・

今では、漠然と理解出来る。
あれは、大人の男女が、愛を交わす行為なのだ。

思い出すだけで、身体が熱くなる。

兄さんに抱かれていたのは彼女・・・
でも・・・なぜか・・・
僕の頭の中では、兄さんに抱かれているのは、奈津子さんではなく・・・僕自身・・・

空想の世界で・・・僕は兄さんと愛を交わす行為にふけっている。

そして・・・気が付くと・・・
僕は、あの時のように・・・
下着の中に手を忍ばせている。

(兄さん・・・あぁ・・・兄さん・・・)

空想の中の兄さんは、限りなく優しく、僕を愛撫してくれる・・・

実際には・・・そんなことはありえない。
けれど、快楽に支配されている僕は
その錯覚にしがみ付く。

指が・・・熱く、敏感になっている中心を・・・追い詰める。

ひと時の・・・
歪んだ快感をむさぼり・・・
熱に浮かされる・・・

そして・・・
悲しいほどに張り詰めた、自分自身を握り締め・・・

まだ青き精を・・・
背徳の証を・・・
自らの手中に搾り出す・・・



後に残されるのは・・・
空しさだけ・・・

意味の無い涙・・・
ぽっかりと心に空いた・・・空虚・・・

つらい・・・

けれど・・・
あれから僕は、毎晩自分で自分を慰めている。

こんな事をしてはいけない。

そう思いはするのだが・・・
無意識のうちに、僕の手は、己の身体をまさぐり・・・指が敏感な部分に絡み付く。

兄さんの声を思い浮かべながら・・・
兄さんに抱かれている自分を想像しながら・・・


そして、欲望を吐き出すと共に・・・
激しい自己嫌悪に陥ってしまうのだ。







僕は・・・
奈津子さんのようになりたい・・・
女のように、兄さんに抱いてもらいたい・・・

幼い頃の思慕は・・・みだらな願望をを伴った「恋」に変わった。

それが・・・おかしい事ぐらい、もう解っている。

僕は、女じゃあない・・・

正常な、男女の営みなど、望むべくも無い。

知られてはいけない・・・
消し去らねばならない・・・


それなのに・・・
想いは・・・日々募り・・・

更に深まってゆく若き欲望に、逆らう事さえ出来ず、呑み込まれ・・・

失望する。
自分自身に・・・







声・・・
声・・・

今日もまた・・
声がする。

兄さんの声・・・
彼女の名前を呼ぶ声・・・

「奈津・・・」

錯覚する。

幼き頃に聞いた声・・・

「夏樹・・・なつ・・・」

僕の名を呼ぶ・・・兄さんの声・・・


優しく・・・

暖かい・・・

遠い昔の・・・声・・・




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2009,06,21

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