忍者ブログ 「願わくは」 てすと中MOON-NIGHT&LOVERS-KISS
       暇人作成妄想創作BL風文字屋主文書副絵詩色々
×

[PR]上記の広告は3ヶ月以上新規記事投稿のないブログに表示されています。新しい記事を書く事で広告が消えます。




願わくは

僕の事は、忘れて欲しい
そんなの嘘だ。

 

 

 

 


 

 

 

僕の事を忘れないで・・・
僕以外を愛さないで・・・

 


初めて見た瞬間・・・好きになっていた。
その・・・陰りのある横顔から
目が離せなかった。

 


しかし・・・
既にこの時
この世に残された僕の時間は、もう少なかった。

そして、その僅かな時間を、
自由に生きるんだって・・・
そう決めていたんだ。


後悔だけは、したくない・・・
あの彼の孤独な魂を、少しでもいいから、暖めてあげたかった。

ううん、違う・・・

側に居て欲しかったのは・・・
僕のほうだ。

そう・・・
怖かった。

終わりを待つだけの日々が・・・
誰にも必要とされないで
誰にも悲しまれずに逝くことが・・・

怖かった・・・


僕も、彼と同じで孤独だったのかもしれない。

だから・・・お互いに惹かれ合った・・・

 

 

思ったとおり、彼は純粋だった。
初めの警戒心が薄れると彼は・・・
いともたやすく僕に心を開いてくれた。


そうして、彼が僕に告げた言葉。
ただ一言・・・

「愛してる・・・」

その言葉を僕に告げる彼はとても可愛かった。

どこか陰りのあるその顔を・・・
その時ばかりは真っ赤にして・・・

 

 

とても、愛しかった。

心の底から愛してた。

 


「僕も、愛してる・・・もう・・・ずっと離れない・・・」


そう彼に告げた僕は・・・
なぜか泣いていた。
声も無く・・・


嬉しかったから?

そうかもしれない・・・
でもそれだけじゃない。


本当に出来る事なら・・・ずっと一緒にいたい。

だけど・・・
僕の未来の何処にそんな時間が残されている?

いつか、彼は僕と出会った事を悔やむだろう。

僕は心のどこかでそう思っていた・・・

 

 

短い幸福の日々・・・

彼の温もりに包まれて眠りにつく。
今まで感じたことのない至福の日々だった。


だから、僕は怖かった。
終わりが近づけば近づくほど・・・怖くなる。


ああ・・・もっと生きたい。
彼と、一緒にこの先も生きていたい。


だけど、無情にもタイムリミットはせまっていた。
惨めに痩せ細り、朽ちていく姿を見せたくなかった。

だから、僕は・・・

彼の前から

『姿』を消した・・・

 

 

 

 


刻は流れ・・・

 

病室のベットに横たわる僕・・・
いよいよ・・・早すぎる人生の日没が近づいていた。

 

身体中に繋がったチューブやモニター類・・・

もはや最強の鎮痛剤でも抑えきれぬ痛み・・・

意識があるのが不思議なくらいだ。

 


そんな中・・・

彼は再び僕の前に姿を現した。

沈痛な表情で・・・


僕は我が目を疑った。

なぜ・・・ここに?


同時に・・・
僕は、心のどこかで安堵していた。

彼に見つかってしまったことを・・・

事実・・・
最後に彼に会えて良かったと思う。
心の底からそう思う。

 


僕はあと少しで永遠に姿を消す・・・
彼もその事を悟っていた。

そんな事は彼の目を見ればすぐわかる。

 

僕は、気の遠くなるほどの痛みの中・・・

最高の笑顔を作って・・・彼に手を伸ばす。


彼は・・・

僕の手を・・・

点滴のチューブが繋がったままの・・・
痩せ細った手を・・・

力強く握ってくれる。

そして、彼は・・・
やはり精一杯の笑顔をつくり
何も言わず大きくうなずいた。

その目に・・・
あふれる涙・・・

 

ああ・・・もう・・・

十分だ・・・

神様・・・

最後に彼に会わせてくれて

ありがとう。


僕は感謝しながら死んでゆける・・・

 


そして・・・
その瞬間はすぐそこまできていた。


だから・・・

僕は最後の力で彼に告げた。

「僕のことは・・・忘れて・・・
そして・・・いつかきっと・・・他の誰かを愛して・・・」

「バカな・・・なぜ・・・」

「いいから・・・聞いて・・・これが君にたのむ・・・最後のお願いなんだ・・・」

彼は、僕の目をじっと見たあと・・・

「ああ・・・」

と一言・・・

僕の手を握りしめながら・・・


だけど、僕は彼が嘘をついていることに気付いていた。

彼の瞳は、僕への愛に溢れていたから・・・

 

この先、彼が本当に誰かを愛する日がくるかもしれない。
だが、そんな彼の姿を僕は見ることはない。

それでいい・・・

それに、きっと彼は僕を忘れない。
彼の心の片隅に、僕はずっといるだろう。

 


真っ赤に貼らした目で、彼が僕を見てる。
僕の手を握り締めて、彼が叫んでる。


「逝くなーーー!!」


ああ、僕は幸せだった。
彼と出会えて幸せだった。


彼と過ごした日々は短いけれど。
僕は、幸せだった。


生まれてきて、幸せだと初めて思った。

 

ありがとう。


だから、今は願う。
彼が、僕以外の誰かを愛することが出来るようにと。


彼の魂が孤独に染まることがもう二度とないようにと・・・・

 


end





 

PR
since 2009/01/17~
ぱちぱち♪ーー更新履歴ーー
★--更新履歴--★
2009,06,21

素敵サイトさま、1件。1月31日。じゅん創作、運命は、奪い与える。本編、番外。全掲載完了。
ただいま、運営テスト中
かにゃあ♪
メインメニュー
goannai
goannai posted by (C)つきやさん
猫日記、ポエム、絵本など。
プロフィール

引きこもり主婦、猫好き、らくがき、妄想駄文作成を趣味。
ブログ内検索
P R
忍者ブログ [PR]