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「電話。」
あの日・・・
あの時・・・
いつもなら、出ない電話に出た。
「はい・・・」
『・・・・。』
受話器のむこうは、無言だ。
「もしもし・・・?」
『・・・・。』
(悪戯電話か・・・)
受話器を置こうとした時に、声がした。
『・・・・汀(なぎさ)・・・』
「あ・・・成久(なるひさ)・・・」
それから、どう言葉を続けていいのか僕にはわからなかった。
しばらくの沈黙の後、成久が言った。
『元気か・・・?』
元気・・・
病気ではないって事は元気ってことだろうか?
「うん・・・僕は元気・・・成久は?」
『ああ・・俺も元気だ。』
また、話しが途絶える。
『汀・・・俺、結婚したんだ。』
「・・・結婚・・・そう・・・結婚したんだ・・・おめでとう。」
そう言うだけで、精一杯だった。
受話器の向こう側で、いったい成久は、何を考えているのだろう。
今更・・・僕に電話なんかかけてきて・・・
どうして?
あれは三年前・・・
別れを告げたのは僕の方だった。
側にいる事が辛くなってきたから・・・
別れを切り出した・・・
でも・・・
忘れた事なんてなかった。
今でも、忘れられないでいる。
(いつか、成久は結婚をする・・・それはわかっていた。だから、側を離れたのに・・・・)
ショックを受け、取り乱す自分を見せたくなかった。
そんな自分が想像できたから・・・
だから、別れを告げたのに・・・
今更、結婚したなんて・・・
どうして報告なんか受けなきゃならないんだ?
僕は、何だか泣きたくなった。
胸が苦しくて、鼻がつんとした。
涙が出てきた。
僕は、もう一度言った。
「そうか、おめでとう・・・じゃあ・・・」
そう言って、僕は電話を切ろうとする。
そんな僕をひき止めるように成久が言った。
とても、切羽詰まったような声で・・・
『・・・・汀・・・会いたいんだ・・・』
とても苦しそうな、そして哀しそうな声だった。
「成久・・・」
何て言ったらいいのかわからない。
唯・・・会いたいと・・・言われた事が嬉しかった。
僕も・・・
ずっと会いたかったから・・・
成久に・・・
涙が出た。
嬉し涙だった。
「うん、僕も会いたい。ずっと成久に会いたかった・・・」
僕は、泣きながら答えた。
そして、僕等は三年ぶりに再会する事になった。
会った事を、僕は後悔するかもしれない・・・
どうせ、後悔するなら僕は会いたかった。
彼が結婚しててもいい・・・
一度だけ・・・
もう一度だけでいいから会いたい・・・
後悔なんてしない・・・
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