言わないよ

 

言わないよ
その言葉だけは・・・
言ってあげない。
絶対に

あなたが欲しがる物なら
何でもあげたい
僕の体も心も
あなたが欲しがるから
欲しがってくれるから
あなたにあげる

でも
言わないよ
その言葉だけは
言ってあげない
絶対に・・・・

 

 

 

約束はしていなかった。
週刊誌に、踊らされてあの人は僕の所にやって来た。
僕の事を心配して・・・

 

女の勘は鋭い。
特に、結婚して子供までいる女の人何て亭主の浮気には敏感だろう。
だから、僕たちが会う時はアリバイをきっちりと作って会う事にしている。

 

 

それでも・・・
この人とは、離れたくないんだ。

なんで、この人と付き合ってんだろ。
なんて、今更考えても仕方がない。

答えはわかりきっている。
ただ、好きだから・・・それだけだ。

世間的に言えば、いわゆる不倫って奴だし、しかもただの不倫じゃない。
もっとたちが悪いかもしれない。
だって、男と男の恋だもん。

世間にばれたら身の破滅って奴だよね。
本当・・・

それでも、全てと引き換えにしてもいいと思うぐらい。
僕は、この人が好きだ。

本音を言えば。
一秒でも離れたくない。
ずっと、そばにいて欲しい。

でも、この人には守るべき家族がいる。
その現実に時折どうしようもないぐらい打ちのめされる。

この人は、僕に愛してるって言うんだ。

僕は何も答えないよ。

だってね。

この人が、いくら愛してるって愛の言葉を僕に囁いてくれてもさ。
情事が終わるとこの人は帰っていってしまうんだ。

自分の帰りを待つ家族のもとへ。
だから、僕は愛してるって言わない。

その言葉を言わないのが僕なりのけじめのつけ方なんだ。
心の防波堤とでも言ってもいいのかもしれないけど。

あの人は、僕の本心を知りたがってるけど。
何でも欲しがるんだから・・・

それを許してるのは僕なんだけど
その言葉だけは・・・
絶対に言ってあげない。

そう・・・

絶対に・・・・言わない。

 

 

終わり