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「相良、こちら俺の上司の本庄さん」
「本庄さん、こっちは前の会社の同僚の相良・・・」
連は、二人を紹介し終えると無意識のうちに本庄の横に座った。
相良は、そんな連を見て歯軋りしたい気持ちになるのを抑え込みな隣に座る。
びくりと、連の身体が震える。
その震えは、隣の本庄に伝わった。
本庄は、連の顔を見た。
泣きそうな顔をしている・・・
相良が、少し肩を寄せると連はつい本庄の方に無意識に体が逃げてしまう。
嫌だった、どうしようもなく嫌だった。
カウンターには沈黙が漂う・・・・
どうしよう・・・連は思った。
本庄を誘ったものの、会話すら成立しない。
何かを話そうとするが、何を話せばいいのかわからない。
これでも、もとは営業か?
ーーー何だか、自分が情けない。
相良は、苛々していた。
話すらしたがらない連の態度にも、上司だという「本庄」という男にも。
この「本庄」という男と、連の接点が見つからないのだ。
三つ揃えのスーツは質がよく、一目で高価だとわかる。
硬そうな髪の毛を後ろに流し固め、
その目つきは険しくするどい・・・
連は、ジーンズに白いコットンシャツだ。
「木城、今・・・・仕事何をしてるんだ?」
相良の問いかけに、連はどう答えていいものか迷う。
自分の、今の情報を何一つとして教えたくなかったからだ。
連は、ふと思った。
そういえば、相良はどうして俺の電話番号がわかったんだろう?
会社の同僚の誰にも教えていなかった。
「相良?お前どうして俺の電話番号わかったんだ?」
相良は、答えに窮したが、開き直る。
「探偵頼んで調べたんだよ」
「たんてい・・・?」
「探偵」はずっと見張っていたのだろうか?
生活全てを、見張っていたのだろうか・・・・
相良は・・・知っているのか?
俺の「秘密」を・・・
それで・・・戻って来いと・・・言ってるのだろうか?
弱みを握られたのか?
俺は相良に・・・・
本庄は、連の顔色がはっきりと変わっていくのを見ていた。
ーーー今にも、泣き出しそうだ・・・・。
この相良と連の関係がどんなものか本庄にはわからない、
だが連が、相良の事を嫌がってるのだけはわかった。
「なあ、木城頼むから戻って来てくれないか?」
連の肩を抱き寄せようとした、相良の腕は本庄によって阻止される。
「何するんですか?」
相良が、本庄に噛み付くように言う。
「嫌がってるように見えたのでね・・・」
相良は本庄の威圧のある視線をまともに、受け止められなかった。
「木城・・・俺は・・・」
俺は・・・お前に側にいて欲しいんだ。
相良は、もう一方の手で木城を引き寄せようとするが、
その腕もまた、本庄に遮られる。
その隙をついて、耐え切れなくなった連は二人の腕をくぐる様に逃げた。
そして、本庄の背中に縋りつく。
ーーーみっともないと思った。
本庄の手前ずっと我慢していた、でも・・・もう耐え切れなかった。
相良は、連の行動に逆上する。
本庄に捕まれた腕を引き抜こうとして暴れる。
たが、その腕はますます強く締めつめられる。
「木城!お前がわるいんだ・・・」
重なる・・・あの時の声。
あの時も相良は言った。
俺の上で頬を殴りながら・・・・
連は混乱する意識を抑えて、吐き出すように告げる。
「俺は、お前を絶対に許さない」
「俺は・・・」
視界がゆがむ・・・
連の体がゆっくりと床に沈む。
本庄は、相良を突き飛ばし連を抱えあげる。
「木城・・・」
なおも押し縋ろうとする相良を、本庄は睨みつける。
誰をも凍りつかせる冷たい視線で・・・・
相良は、その視線に動けなくなる。
「あんたは、一体・・・木城の何なんだ?」
相良の問いかけに本庄は答えない。
いや、答えようがない。
不意に相良は、笑った。
「お前は、いつか俺と同じ事をする。」
相良は、本庄の中に自分と同じ光を見つけた気がした、
「木城」という光に惑わされた者の光。
本庄は、腕の中の連をしばしみつめ・・・
その後、相良の視線をまっすぐに受けとめ答えた。
「俺は、何があっても絶対にこいつを傷つけたりしない。」
相良は・・・何も言い返せなかった。
「好きだったんだ・・・・」
どうやって、気持ちを示したらいいのかわからなかった・・・・
相良の声は、連には届かない。
連を腕に抱えて、本庄は「Aqua」を後にした。
さて・・・・どうしたものかな。
俺は、木城の家を知らない・・・・
どうやら、俺の家に連れ帰る以外なさそうだな・・・・
そうして、本庄は連を自宅へと連れ帰った。
この夜を境にして、二人の関係はゆっくりと変わり始める。
終わり