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彼、佐々岡 俊哉(ささおか しゅんや)は、いささかうんざりしていた。
合意の上でここに来たはずなのに・・・
女は始める前から・・・
今度会う約束をしたがっている。
朝まで・・・一緒にいたらどんな約束を求められるかと思うとうんざりだった。
何のために、めんどくさい事をしたと・・・
彼は、SEXにはあまり興味がない。
ただ、肌のぬくもりを感じたいから
雨の日は、街へ出て女を引っ掛けるのだ。
だから、次はないのに・・・・
服を脱ぎながら女は言った。
「今度・・・」
「俺、帰るね・・・」
彼は、女に背を向けると出て行く。
引き止める女の声を無視して。
ホテルの外はまだ雨が降っていた。
気分はどんどん憂鬱になる。
・・・・さっきの店、静かでよかった。
そう思い出し、店のほうへ足を運ぶ。
「岬、俺はもう帰るけど・・・」
「俺はまだ少し飲んでいる。」
眉間に皺を寄せて考え事をしながら1人で飲んで楽しいのか?
一倉はそう思ったが、口には出さない。
「そうか、じゃあまたな。」
そう声をかけると、岬の様子を気にしながらも店を後にした。
ちょうど一倉は店を出たところで、前方から歩いている俊哉を見かけた。
「佐々岡・・・」
戻ってきたのか・・・と、声をかけようとしてやめる。
到底、話しかけられるような雰囲気ではなかった。
俊哉は、一倉に気がつかないで店に入る。
一倉は気がついていた。
岬が、佐々岡に惹かれていることを・・・
だが、岬の為に祈ってもいた。
その気持ちに、気がつかない事を・・・
もし、その気持ちに気がついたなら・・・
岬という不器用な男は、その想いに苦しむ事が見えていたからだ。
だが、そんな祈りも無駄になりそうだ。
一倉は、今夜はあの二人の間に何かおきそうだな・・・
そう思いながらも、今度こそ本当にその場を後にした。
一方、岬の頭の中には・・・
女と連れ立って出て行く、俊哉の横顔が焼きついていた。
カラーンと扉が開く音がし、無意識に岬は視線をむける。
ーーー佐々岡!
岬は、動揺して思わず立ち上がった。
勢いで、椅子が大きな音をたて倒れる。
ガターンと、店に響く大きな音がした。
俊哉はその音に驚き、視線を向けた。
そして、さらに岬の姿を見てまた驚いた。
「佐々岡・・・」
ぽつりと岬は呟いた。
「岬さん1人で飲んでるんですか?」
俊哉は、半ば呆然としている岬に近寄り話し掛ける。
岬は、俊哉を目の前にして少し緊張した。
「岬さん?お邪魔じゃなかったら一緒に飲みませんか?」
「ああ・・・」
そうして、普段は接点の少ない二人は飲み始めた。
2、end