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窓を打つ激しい雨音が、まどろみかけていた意識を浮状させた。
ベットから降り、窓から外を眺めた俺の気分は重くなる。
雨・・・・
俺は、雨が嫌いだった。
雨は、心を不愉快にさせる。
だから・・・・
嫌い・・・・
本当の理由は・・・
誰も知らない
誰にも言えない
雨の日は1人で寝るのが嫌になる。
だから、俺は街へ行く。
人肌が恋しい・・・それだけが理由で・・・
愛を拾いに行くのだ。
一晩限りの恋人を求めて・・・
いつものバーに座り飲む。
適当にすきを作ってみせる。
声を掛けやすいように・・・
後ろのボックス席に座った女がちらちらと見ている。
簡単だ。
いつも思う。
「お1人ですか?」
女が声を掛けてくる。
・・・まあまあだな・・・
そんな事を考えていると知ったらこの女はどうするんだろか?
「ええ、連れが急用で来れなくなったので・・・・」
俺は、女に微笑みかけた。
女の頬が赤く染まる。
・・・・落ちた・・・・
そっと女の耳元で囁きかける。
「どこかに移動しませんか?」
無言で頷く女をエスコートして店を後にした。
だから、そんな俺を見ている視線に気がつきもしなかった。
岬には一瞬それが誰だかわからなかった。
・・・佐々岡・・・
「岬、あれ佐々岡じゃないのか?」
戸惑ったような一倉の声がした。
「そうみたいだな・・・」
いつもと感じが違って見えた。
いつもネクタイをだらりとたれ下げている佐々岡の襟元はきっちりとネクタイが締められ。
質のいいモノトーンのスーツを身に付けていた。
普段の佐々岡を見た事のある、一倉が戸惑ってもおかしくはない。
それほど、彼は感じが違って見えたのだから。
髪の毛をきちんと整え、スーツをきっちり着た彼は、
普段は気がつかせないがこうしてみると綺麗な顔立ちをしている事がよくわかる。
彼に、女が近寄り声をかける。
・・・待ち合わせか・・・連れだろうか?
「美人だな・・・」
一倉の呟く声がする。
そう、美人だった。
・・・・彼女か?
ずくりと、胸が締め付けられる。
女をエスコートし、彼は店から出て行った。
いつからだろう・・・・
岬は考える。
彼の事を・・・
最近では、気がつけばいつでも彼の事を考えている己がいた。
彼の、子供の無邪気さと純粋さ・・・
人当たりのいい笑顔に騙されていた日々
岬が、彼の笑顔に隠されていた本心に気がついたのは何時の頃だろう・・・
思えば、彼はいつも笑顔だった。
前職の営業で培われただろう笑顔は、人の心にそっと入り込み。
気がつけば、彼に魅せられていた自分がいた。
何人の心にそうやって入り込むのだろう?
そう思ったときもある。
でも、彼は・・・
何かを抱えている・・・
そんな気してならなかった。
岬は、彼が出て行った扉をいつまでも眺めていた。
一倉はそんな岬をみて溜息を付く。
あの小僧の事となると、岬は冷静さを失う。
まさかと、思うがな・・・
俺の思い違いであって欲しいが・・・
「まあ、すでに俺の話なんて聞いちゃいないしな・・・」
はあーと溜息を吐き出し、一倉はグラスに残った酒を飲み干した。
1、end