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残された時間は少ない・・・

それなのに、あまりにも回り道をしてしまった。

 

 

 

無駄にした時間・・・

取り戻そう・・・

二人で・・・

 

 

 

 

 


部屋に入ると岬は、彼をいたわるようにそっと抱きしめる。

愛しい人の痩せてしまった身体を、岬は その両腕で感じ取っていた。

 

 

 


かわいそうな春樹・・・

もし代わってあげられるのなら・・・

俺は・・・

 

 

 


清田は切なくなって泣き出していた。

壊れ物を扱うみたいに・・・

優しく抱きしめられたから・・・

以前のように壊れるほど強く抱きしめて欲しかった。

強く抱きしめて 何もかもを忘れさせて欲しかった。

一瞬でもいいから・・・

 

 

 


「・・・もっと・・・強く抱いて・・・」

 

 

 


震える清田の声に岬はやっと気がつく・・・

彼は怖いのだ。

 

 

 

 

怯えているのだろう・・・

当たり前だ・・・

どこの世界に自分が死ぬのを怖くない人間がいよう・・・

俺だって・・・

怖い・・・

春樹を失うのは・・・怖い・・

 

 

 

 


もはや二人に、言葉はいらなかった。

互いに相手の存在自体を必要としていた。

愛する人を残し死んでゆく怖さ・・・

愛する人を失ってしまう怖さ・・・

ひとときでも忘れる事ができるなら・・・

二人は互いの身体を求め合う・・・

それは当然の事だった。

 

 

 

 

岬の指がシャツのボタンに伸びた。

清田は迷う・・・

 

 

 


この痩せてしまった体・・・

見せてしまっていいのか・・・

哀れみや、同情なんていらない・・・

欲しいのは愛だけ・・・

 

 

 

 


岬の目を見つめる。

岬の瞳は愛で溢れている。

今更だった・・・

 


そう・・・

この人はこんなに俺を愛してくれている。

 

 

 

大丈夫だ・・・

 

 

 

 

 

「自分で脱ぐよ・・・岬さん・・・」

 

 

 

 


清田は岬の瞳の前で

すべての衣服を脱ぎさった・・・

 

 

 

 


清田の体を・・・

窓辺から差し込む月の光が優しく包み込む。

 

 

 

無言で彼の身体を見つめる岬。

 

 

 


「岬さん・・・」

 

 

 

 

清田は岬が何も言わないので・・・

少し不安になる・・・

 

 

 


「春樹・・・とても綺麗だ・・・」

 

 

 

嘘ではなかった・・・

 

 

 

 

月光に浮き上がる清田の身体は青く輝いていた。

その肌は 透き通るようで・・・

細身の体の美しさは中性的で・・・

すべてが、儚い透明感に包まれていた。


そう・・・この世のものとは思えない・・・透明感に・・・

 

 


岬の目には それが奇跡のように映っていた。

 


翼のない天使か・・・

 


羽のない妖精か・・・


そんな事は岬にはわからない。

 

 

 

 


とにかく幻のように・・・

蜃気楼のように・・・

消えてしまうのではないか・・・


そしてそのまま彼は永遠に戻ってこない・・・

 

 

 

 

 

我慢できなかった・・・

溢れ出す涙が止まらない・・・

止めようとしても止まらない・・・

鮮明に記憶に刻み付けよう・・・

愛しい人の姿を・・・

 

 

 

岬の涙に気が付いた清田・・・

 

 

 

 

 


この人を残して・・・

俺は死んで行く・・・

 

 

 

 

 

 

 


( あなたを置いて・・・死にたくない・・・)

 

 

 

 

そう口から出そうになる

そうしたら・・・

きっと、この人は・・・

 

 

 

 

 


( お前が居ないのに・・・生きている意味など・・・)

 

 

 


そう言ってくれるだろうか?

誘惑にかられる・・・

 

 

 

 


でも、この人には俺の分まで生きて欲しい・・・

でも、誰も愛さないで欲しい

俺以外の誰も・・・

 

 


「岬さん・・・俺を抱いて・・・あなたを感じさせて・・・」

 

 


清田は、岬を精一杯強く抱きしめた。

 

 

 

 

 

二人重なるようにしてベッドに横たわる。

最後だとわかっていた・・・

これが最後だと・・・・

伝わってくる体温・・・

 

 

それが清田の心を暖める。

 

 

 

 

 


「愛してる・・・」

 

 

 

岬は清田にキスをする。

 

 

 


それは、優しいキスだった。

 

 

 


初めての時のように二人・・・

唇を重ねあう・・・

 

 

 

 

 

「・・・あ・・・」

 

 

 

 


甘い吐息を洩らす。

それを合図に岬は愛撫を重ねていく・・・

覚えている

彼の感じるところ・・・

 

 

 

 

 

「岬さん・・・」

 

 

 

清田は岬の昂ぶりを自ら導く。

 

 

「春樹・・・」

 


岬は、彼の望むまま 深く重なってゆく・・・

 


「岬さん・・・」

 

 

思わず岬の背中に爪を立てる清田・・・

 

 


この爪あとが永遠に残ればいいのに・・・

次第に激しさを増す岬の動きに、息が詰まる。

 

 

 

 

「・・・大丈夫か?・・・苦しくないか?・・・」

 

 

 

 

清田の身体を気遣い、時折声をかける岬。

切なそうに喘ぎながら、答える清田。

 

 

 

 


「大丈夫だから・・・続けて・・・このまま・・・」

 

 

 

 


そう・・・

このまま・・・

死んでもいいから・・・

 

 

 

だから・・・

お願い・・・

忘れないで

俺の事

誰よりもあなたを愛している

俺の事を

忘れないで・・・

永遠に・・・

 

 


清田の頬を、涙が伝う・・・

そして その身体の奥で、岬の情熱を受け止めると清田は意識を手放した。

 

 

 

 

岬は、動かなくなった清田を抱きしめていた。

 

 

 

「春樹?・・・」

 

 

 

 

呼びかけにも反応がない。

突然不安に襲われる岬。

 

 

 

 

 

大丈夫だ・・・息はしている・・・

死んでしまったのかと錯覚した。

一瞬、自分の心の中の恐怖を 覗きこんだような気がする。

真っ暗な恐怖だった・・・

 

 

 

 


春樹・・・

お前が逝ってしまったら・・・

 

 

俺は耐えられるだろうか・・・

岬の瞳から涙があふれる・・・

 

 

滴り落ちた涙が・・・
清田の頬を濡らす。

 

 

 

 

岬の心が叫んでいた。

 

 

 

 

 

 

嫌だ・・・

逝かないでくれ・・・

消えないでくれ・・・

俺を一人にしないでくれ・・・

 

 

 

 

 

 

もしこの世に神が存在するのなら・・・

俺の残りの命を・・・

彼に半分与えてくれ・・・

 

 

 

 


そして、一緒に逝かせてくれ・・・

岬は、叫びそうになるのをこらえていた。

 

 

 

 

 

 


「愛してる・・・」

 

 

 

 

 

彼の耳もとにささやく。

 

 

 

 

 

「死ぬな・・・春樹・・・」

 

 

 

 

 

 

 

 

 


声が震える。

 

 

 

 

 

 

 

 

 


「愛してる・・・」

 

 

 

 

 

 


何度でも言いたかった・・・

聞こえないとわかっていても・・・

伝えたかった・・・

 

 

 

 

 

 


愛してる・・・・

愛してる・・・・

愛してる・・・・

 

 

 

 

 

 

 

 

かすかに、清田の顔が微笑んだ。

 

 

 

 

 

「春樹?・・・」


「・・・・・」

 

 

 

 

 


・・・気のせいか・・・

でも気持ちが届いたような気がした。

それで十分だった・・・

 

 

 

 

 


岬は朝まで・・・

清田の寝顔をずっと見ていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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2009,06,21

素敵サイトさま、1件。1月31日。じゅん創作、運命は、奪い与える。本編、番外。全掲載完了。
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